健康診断での高血圧の基準とは?受診勧奨基準と診断基準

健康診断での高血圧の基準とは?受診勧奨基準と診断基準

健康診断で「血圧が高い」と指摘されても、どの数値が「高血圧」なのか分かりにくいという声を多く聞きます。実際、高血圧症の診断基準はこれまでと変わらず、診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上が基準です。しかし令和6年度から、特定健診での「すぐに受診すべき血圧(受診勧奨判定値)」が160/100mmHg以上に変更され、混乱する方も少なくありません。

この記事では、高血圧の診断基準と受診勧奨基準の違い、そして2025年に公表される日本高血圧学会「JSH 2025」の新基準について詳しく解説します。

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健康診断で「血圧が高い」という結果だったら

毎年の健康診断で「血圧が高め」という結果が出て、不安を感じて受診される方が増えています。高血圧は自覚症状が少ない一方で、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などの生活習慣病を引き起こす大きな要因となるため、早めの確認と対策が大切です。

最近では「診断基準が変わったのではないか」「血圧の基準がおかしい」といった質問も多く寄せられますが、実際には高血圧症そのものの診断基準は従来と変わっていません。ただし、健康診断で「すぐに受診を勧める基準(受診勧奨基準)」が令和6年度から変更されたため、誤解を招きやすくなっています。

また、血圧の基準とは言っても、脳卒中や心臓病のリスクを見つけるという目的の健康診断での基準と、その治療をすべき対象となるかの診断基準、そして、高血圧の治療によりどこまで血圧を下げるべきかの降圧基準では少し違いがありますので、その点も踏まえて理解しやすいよう、まずはじめにそれぞれの血圧を一覧表で整理しておきましょう。

特定健診での血圧「受診勧奨判定値」変更(令和6年度)

区分判定基準内容
令和5年度まで収縮期血圧 180mmHg以上 または 拡張期血圧 110mmHg以上直ちに受診を要する高血圧として医療機関受診を勧奨
令和6年度から収縮期血圧 160mmHg以上 または 拡張期血圧 100mmHg以上早期受診を推奨(受診勧奨基準が引き下げ)
参考収縮期血圧 130~159mmHg経過観察・生活習慣の見直しを指導

高血圧症の診断基準(JSH 2025/日本高血圧学会)

測定条件高血圧と診断する基準値
診察室血圧収縮期血圧 140mmHg以上 または 拡張期血圧 90mmHg以上
家庭血圧収縮期血圧 135mmHg以上 または 拡張期血圧 85mmHg以上

JSH 2025で統一された主要な「降圧目標」

患者区分主要降圧目標(診察室血圧)補足説明
一般成人130/80mmHg未満年齢や合併症に関わらず原則共通の目標値
糖尿病・CKD(慢性腎臓病)・心血管病患者130/80mmHg未満これまでと同様の厳格管理を推奨
高齢者(75歳以上)130/80mmHg未満を目標に個別調整低血圧症状や転倒リスクに配慮して設定
家庭血圧の目標値125/75mmHg未満より低めの値で管理が望ましい

高血圧症の診断基準は変わっていない

日本高血圧学会の定める診断基準は、診察室で測定した血圧が収縮期血圧(上の血圧)140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)90mmHg以上である場合に高血圧と診断します

この基準は家庭血圧でも同様に定義されており、家庭で測定した場合は135/85mmHg以上が高血圧とされます。

つまり、診断基準自体はこれまでと変わらず、あくまで「医師が高血圧症と診断する際の基準」であり、特定健診での「受診を勧める基準」とは異なります。

令和6年度から変更された「受診勧奨基準」

厚生労働省が実施する特定健康診査(いわゆるメタボ健診)では、検査結果をもとに生活習慣病の予防や早期発見を目的とした「受診勧奨判定値」が定められています。

このうち、血圧に関する受診勧奨判定値(すぐに医療機関を受診すべき血圧値)が、令和6年度から収縮期血圧160/100mmHg以上に変更されました

一方で、これ未満の方でも130〜150mmHg台の血圧が続く場合は、生活習慣の見直しや定期的な血圧測定が推奨されます

この変更は「健診結果のリスク層別化を明確にする」ことを目的としており、診断基準の緩和ではありません。

特定健診における受診勧奨判定値

特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を

特定健診の第4期(令和6年度から)用いられている血圧の受診勧奨判定値について、一部で基準が変ったという誤解が広まっています。
厚生労働省による「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度度版)」の受診勧奨判定値を超えるレベルの対応についてこの内容は、以下のようになっており、これは、日本高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2019年版の推奨と同じです。

収縮期血圧≧160mmHg 又は 拡張期血圧≧100mmHg
→ ①すぐに医療機関の受診を

140mmHg≦収縮期血圧<160mmHg 又は 90mmHg≦拡張期血圧<100mmHg
→ ②生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を

今回の誤解は、2つの記載の①だけを強調されたものと考えられます。

引用:特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を. 日本高血圧学会,令和6年5月24日

収縮期 140/ 拡張期 90mmHg以上(Ⅰ度高血圧)に対する説明(日本高血圧学会より)

上記の②に相当するⅠ度高血圧(140mmHg≦収縮期血圧<160mmHg又は90mmHg≦拡張期血圧<100mmHg)への対処は以下のように記載されています(抜粋)。

「今回、あなたの血圧はⅠ度高血圧になっていました。この血圧レベルの人は、望ましい血圧レベルの人と比べて、約3倍、脳卒中や心臓病にかかりやすいことが分かっています。正確な血圧の診断の上で、治療が必要となる血圧レベルです。血圧を下げるためには、減量、適度な運動、お酒を減らす、減塩、野菜を多くして果物も適度に食べるなど、生活習慣の改善が必要です。ご自身で生活習慣の改善に取り組まれる方法、特定保健指導を活用する方法、保健センター等で健康相談や保健指導を受ける方法等があります。これらを実行した上で、おおむね1か月後にかかりつけの医療機関で再検査を受けてください」

引用:特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を. 日本高血圧学会,令和6年5月24日

JSH 2025で示された新しい考え方

日本高血圧学会は2025年に6年ぶりとなる新しいガイドライン「JSH 2025」を発表し、高血圧の治療指針をより明確化しました。

今回の改訂では、「診断基準」と「降圧目標」が整理され、誰にでもわかりやすい基準に統一されています。

診断基準は従来通り変わらず、診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上とされています。

ただし注目すべきは、血圧をどこまで下げるか(降圧目標)についての考え方が大きく変わった点です。

これまでは年齢や持病によって異なる目標が設定されていましたが、JSH 2025ではすべての成人において降圧目標が原則統一されました。これにより、医師と患者が共有すべき「目指す血圧値」がよりシンプルで明確になっています。

血圧分類と診断基準の目安

日本高血圧学会では、血圧の状態を以下のように分類しています。診察室血圧と家庭血圧の両方で判断され、家庭血圧の方がやや低めの基準で定義されています。

正常血圧は診察室で120/80mmHg未満、家庭では115/75mmHg未満とされ、血圧が130/80mmHgを超えてくると「高値血圧」として注意が必要です。

分類診察室血圧(mmHg)家庭血圧(mmHg)
正常血圧120未満/80未満115未満/75未満
正常高値血圧120~129/80未満115~124/75未満
高値血圧130~139 または 80~89125~134 または 75~84
Ⅰ度高血圧140~159 または 90~99135~144 または 85~89
Ⅱ度高血圧160~179 または 100~109145~159 または 90~99
Ⅲ度高血圧180以上 または 110以上160以上 または 100以上
(孤立性)収縮期高血圧収縮期 140以上/拡張期 90未満収縮期 135以上/拡張期 85未満

高値血圧の段階で生活習慣を整えることで、多くの方が薬を使わずに血圧を安定させることができます。

一方で、140/90mmHg以上になると高血圧症と診断され、160/100mmHgを超える場合には医療機関での治療が必要になります。

また、上の血圧のみが140mmHg以上で下の血圧が正常範囲にある場合は「孤立性収縮期高血圧」と呼ばれ、加齢や動脈硬化が関係していることが多く、高齢者でよく見られます。

家庭血圧測定の重要性

診察室での測定値は、緊張などで一時的に高く出ることがあります。これを「白衣高血圧」と呼び、家庭血圧での再確認が重要です。

家庭で朝と夜の2回、同じ時間帯に測定することで、より安定した平均値を知ることができます。
一方で、自宅では血圧が低くても診察室では高い場合、逆に家庭では高いが診察室では正常な「仮面高血圧」もあり、いずれも動脈硬化や心血管リスクが上がることが知られています。

そのため、医師が診断や治療方針を決める際には、診察室血圧と家庭血圧の両方を総合的に評価することが大切です。

健診で高血圧を指摘されたらどうすべきか

健康診断で高血圧を指摘された場合、「すぐに薬を飲まなければならない」というわけではありません。メタボリックシンドロームを始めとする生活習慣病関連のリスクの一つとして、まずは食事内容や塩分摂取、体重、運動習慣、喫煙、飲酒などの生活習慣を見直すことが基本です。

特に日本人は塩分摂取量が多いため、塩分を1日6g未満に抑えることが推奨されています。
糖尿病や脂質異常症を併発している場合は、より厳格な血圧管理が必要となります。
当院では、糖尿病内科の診療を行っており、生活指導とともに必要に応じて薬物治療を行い、定期的な血圧測定で変化を確認しながら治療方針を調整しています。

まとめ

高血圧症の診断基準(140/90mmHg以上)はこれまでと変わっていませんが、令和6年度から特定健診の「受診勧奨基準」が160/100mmHg以上に変更されました。

日本高血圧学会の新ガイドライン「JSH 2025」では、診断基準と降圧目標がより明確に区分され、すべての成人で統一された降圧目標が示されています。
健診で血圧を指摘された場合は、放置せず、まずは生活習慣の見直しと医療機関での相談を行いましょう。
早期から正しい知識と対応を行うことで、脳や心臓、腎臓を守ることができます。

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