圧迫骨折とは?腰椎・胸椎など背骨の骨折で起きる症状と治療法

背中や腰の痛みが続くとき、「筋肉痛だろう」「年齢のせいかもしれない」と考えて様子を見る方は少なくありません。しかし、特に高齢の方や骨粗しょう症のある方では、はっきりした外傷がなくても背骨に骨折が起きていることがあります。それが「圧迫骨折」です。
圧迫骨折は早期に気づくことで治療の選択肢が広がり、痛みの長期化や姿勢の変化を防ぐことにもつながります。ここでは腰椎や胸椎に起こる圧迫骨折の症状、背景、治療の考え方について解説します。
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圧迫骨折とはどのような骨折か
背骨は椎体という骨が積み重なってできています。圧迫骨折とは、この椎体が縦方向の力に耐えきれず、前方を中心に押しつぶされるように変形する骨折です。若い方では交通事故や高所からの転落など強い外力によって起こりますが、高齢者では骨密度の低下により、日常動作の中で発生することがあります。
骨粗しょう症が進んでいる場合、尻もち、重い物を持ち上げた動作、くしゃみ、前かがみの姿勢などがきっかけになることもあり、本人が「転んだ覚えがない」と話されるケースも珍しくありません。そのため「いつの間にか骨折」という名前で、覚えておいた方が良い骨折としてテレビCMなどでも啓発されていますよね。
背骨の中でも特に腰椎の上部は胸椎との移行部で力が集まりやすく、圧迫骨折が起きやすい部位となっています。
背骨の胸の部分「胸椎」の構造について
胸椎は背骨の中央部に位置し、首の下から腰椎の上までの12個の椎骨で構成されています。胸椎は肋骨と連結して胸郭を形成しているのが特徴で、体幹の保護と安定性に大きく関与しています。椎体は腰椎に比べるとやや小さく、縦方向に圧力が加わった際に変形しやすい構造をしています。
胸椎はもともと後方に緩やかに丸くカーブしており、この後弯構造が衝撃を分散する役割を担っていますが、同時に圧迫力が前方の椎体に集中しやすい特徴もあります。また、肋骨によって可動性は制限されているため、強い外力が加わると逃げ場が少なく、椎体に負荷が集中しやすくなります。高齢者では骨粗しょう症により椎体内部が弱くなり、この圧力に耐えきれずつぶれる形で圧迫骨折が起こることがあります。
背骨の腰の部分「腰椎」の構造について
腰椎は背骨の下部に位置し、胸椎の下から仙骨の上までにある5つの椎骨で構成されています。
体重を支える役割が大きいため、椎体は厚みがあり、円柱状に近い形をしています。椎体は前方に位置し、その後方には椎弓があり、これらが組み合わさって脊柱管というトンネル状の空間を形成しています。この中を脊髄や神経が通っています。
椎体と椎体の間には椎間板があり、衝撃を吸収しながら体の動きを滑らかにしています。腰椎は前後への動きや体を反らす動きが比較的大きい一方で、回旋運動はそれほど大きくありません。体幹の安定性と柔軟性を両立する構造ですが、上半身の荷重が集中する部位でもあるため、骨密度が低下している場合には圧迫骨折が生じやすい部位となります。

背骨の解剖学的な関係性と、圧迫骨折で椎体がどう変形するか(楔状変形)
椎体・椎間板・脊柱管の構造

圧迫骨折がどのような骨折なのかを理解するためには、背骨を構成する要素の関係を知ることが大切です。背骨は椎体という骨が積み重なって構成されています。椎体は前方に位置し、体重や上半身の荷重を受け止める役割を担う柱状の構造です。椎体と椎体の間には椎間板があり、衝撃を吸収しながら体の動きを滑らかにしています。
椎体の後方には椎弓があり、これらが合わさって脊柱管という空間を形成します。この脊柱管の中を神経が通っています。つまり、椎体は主に「荷重を支える構造」、脊柱管は「神経を守る構造」と役割が分かれています。
神経と靭帯との位置関係
胸椎レベルでは脊柱管の中に脊髄があり、腰椎レベルでは馬尾神経が走行しています。神経は椎体の後方外側にある椎間孔から外に出ていき、体幹や下肢へ分布します。
また、椎体の前方には前縦靭帯、後方には後縦靭帯が走り、さらに椎弓間には黄色靭帯などが存在して背骨の安定性を保っています。これらの靭帯は椎体同士の位置関係を支え、過度な動きを防ぐ役割があります。
圧迫骨折で生じる楔状変形の仕組み
圧迫骨折で典型的に見られるのが楔状変形です。楔状変形とは、椎体の前方が後方より強くつぶれ、側面から見るとくさび状の形になる状態を指します。
背骨は胸椎で後弯、腰椎で前弯というカーブを持ち、日常動作では椎体の前方に圧縮力が集中しやすい構造になっています。骨密度が低下している場合、この圧縮力により椎体前方の海綿骨が沈み込み、前方が低くなる形で変形が生じます。
楔状変形が意味すること
楔状変形は単に骨がつぶれるだけではなく、椎体の形状が変わることで背骨全体のアライメント(位置関係)に影響を及ぼします。椎体は荷重を支える主要構造であるため、その形状変化は脊柱全体の力の分散の仕方にも関係してきます。
圧迫骨折は「椎体がつぶれる骨折」と表現されることが多いですが、実際には椎体・椎間板・脊柱管・神経・靭帯が連動する構造の中で生じる変形であり、どの部位にどの程度影響が及ぶかを評価することが重要になります。
図を見ていただくとわかりますが、椎体がつぶれたら、周りの組織も影響を受けますよね。
圧迫骨折でみられる代表的な症状
圧迫骨折の最も特徴的な症状は、突然出現する局所的な背部痛や腰痛です。痛みは体を動かしたときに強くなり、安静時にはやや軽減する傾向があります。特に起き上がりや立ち上がり、体をひねる動作が困難になることがあります。
筋肉や関節由来の痛みと異なり、「一点が鋭く痛む」「姿勢を変えると激しく痛む」といった訴えが見られることがあります。また、時間が経っても痛みが長引き、日常生活動作が制限される場合には注意が必要です。
椎体がつぶれて高さが低下すると、背中が丸くなる、以前より身長が低くなったように感じるといった変化が見られることもあります。これらは複数の圧迫骨折が重なることで顕著になります。
腰椎の圧迫骨折の特徴
腰椎に起こる圧迫骨折では、腰の中央から下部にかけて痛みが出やすく、体重がかかる姿勢で痛みが増強します。動き始めが特につらく、寝返りや起き上がりの動作が困難になる方もいます。
ぎっくり腰と似た経過をたどることもありますが、安静にしていても数日から数週間痛みが続く場合や、体幹を支えられないほどの痛みがある場合には、骨折を念頭に置いた評価が必要になります。
胸椎の圧迫骨折の特徴
胸椎の圧迫骨折では背中の中央部に痛みを感じることが多く、深呼吸や咳で痛みが強まることがあります。胸椎は胸郭と連動しているため、呼吸動作と痛みが関連することがあるのが特徴です。
胸椎の骨折が重なると、脊柱の後弯が強くなり、いわゆる「背中が丸くなる」姿勢変化が進行します。この変形は呼吸機能の低下や消化器症状の原因になることもあり、見た目だけでなく身体機能全体に影響します。
神経症状が出るケース
多くの圧迫骨折は神経症状を伴いませんが、骨の変形が強い場合や、骨片が脊柱管側へ突出する場合には神経が圧迫されることがあります。その場合、足のしびれ、感覚の低下、筋力低下、歩行のしづらさなどが出現することがあります。
排尿や排便の異常が出る場合は緊急性が高いこともあり、神経症状が疑われるときには早急な評価が重要です。
圧迫骨折の背景にある要因
圧迫骨折の最も重要な背景は骨粗しょう症です。骨の内部構造がもろくなり、椎体が圧力に耐えられなくなります。閉経後女性、高齢者、体重の軽い方に多く見られます。
そのほか、悪性腫瘍の骨転移、感染症、長期ステロイド使用などが骨を弱くし、骨折の原因となることがあります。単なる外傷だけでなく、全身状態の評価が重要になります。
圧迫骨折の検査や診断基準
圧迫骨折が疑われる場合、診断は症状の経過と身体所見、そして画像検査を組み合わせて行われます。
単に「背中が痛い」というだけでは確定できないため、骨の状態と神経の影響を客観的に確認していくことが重要になります。
診察では、痛みの出方や動作との関係、転倒や物を持ち上げる動作などのきっかけの有無を確認します。圧迫骨折では、特定の姿勢や体を起こす動きで痛みが強まることがあり、背骨のどのあたりに痛みが集中しているかも重要な手がかりになります。
診断の中心となるのは画像検査です。まず行われることが多いのはレントゲン検査で、背骨を側面から撮影することで椎体の高さの変化や楔状変形の有無を確認します。ただし、初期の圧迫骨折では変形がはっきりしない場合もあり、その際にはMRI検査が役立ちます。レントゲン検査だけではいつの骨折かわからないことがありますが、MRIでは骨の内部の変化を評価できるため、今の痛みの原因になっている新しい骨折かどうかの判断材料になります。
CT検査は骨の形状をより詳しく把握でき、骨折の広がりや後方への変形の程度を確認する際に用いられることがあります。特に神経の通り道に影響が及んでいないかを評価する場合に重要です。
診断では、単に骨がつぶれているかどうかだけでなく、「いつ起きた骨折か」「神経への影響があるか」「他にも骨折がないか」などを総合的に判断します。また、高齢者では骨粗しょう症が背景にあることが多いため、骨密度検査を行い、再発予防の視点も含めて評価されることがあります。
圧迫骨折には明確な「数値の診断基準」があるというよりも、症状、画像所見、経過を合わせて総合的に診断されることが特徴です。そのため、早い段階で適切な検査を受けることが、正確な評価につながります。
圧迫骨折の回復までの期間の目安
圧迫骨折の回復期間は、骨折の程度、年齢、骨密度、基礎疾患の有無などによって大きく異なりますが、一般的には数週間から数か月単位で経過をみていくことが多いとされています。
痛みそのものは、骨折直後が最も強く、安静や装具の使用により徐々に軽減していくことが多いですが、日常生活に支障の少ない状態に落ち着くまでにおおよそ1~2か月程度かかることがあります。骨が安定してくるまでにはさらに時間が必要で、画像上で骨折部が落ち着いた状態になるまでには3か月前後かかることも珍しくありません。
ただし、これはあくまで目安であり、骨粗しょう症が強い場合や、複数の椎体に骨折がある場合には、回復により長い時間を要することもあります。一方で、骨折が軽度で早期に治療が開始できた場合には、比較的早く日常生活に戻れることもあります。
重要なのは、痛みが軽くなっても骨の回復が完全に終わっているとは限らない点です。自己判断で無理をすると変形が進行することもあるため、医師の指示に従って経過をみることが大切です。
治療の基本的な考え方
圧迫骨折の治療は、「骨が自然に安定するのを待つこと」と「その間に変形や痛みを悪化させないこと」を軸に進められます。多くの場合、まずは保存的治療が基本となります。
保存的治療の中心となるのが安静と体幹の安定化です。骨折直後は痛みが強く、無理な動作をすると椎体のつぶれが進行することがあります。そのため、痛みが強い時期には動作を制限し、骨に余計な負荷がかからないようにします。
コルセットなどによる動きの制限
この際に重要な役割を果たすのがコルセットです。圧迫骨折では、体幹をしっかり支える硬性コルセットが用いられることがあります。体の前後から体幹を固定し、背骨の動きを制限することで、骨折部への負担を減らす目的があります。
一方で、軟性コルセット(布製のベルトタイプ)のような装具が使われることもあります。こちらは体幹の動きをある程度制限しながら、日常生活動作を行いやすくするための補助的な役割を持っています。骨折の程度や痛みの強さ、患者さんの体格や生活状況に応じて、装具の種類や装着期間は調整されます。
圧迫骨折による痛みのコントロール
痛みのコントロールも治療の重要な要素です。鎮痛薬の内服や貼付薬などを用いながら、痛みによって活動量が極端に低下しないよう配慮されます。痛みが落ち着いてくる時期には、無理のない範囲で体を動かすことが、筋力低下や体力低下を防ぐために重要になります。
手術が検討されるケースも
一方で、すべての圧迫骨折が保存的治療で対応できるわけではありません。痛みが非常に強く長期間続く場合や、椎体のつぶれが進行して神経に影響が出ている場合、あるいは背骨の安定性が大きく損なわれている場合には、手術が検討されることがあります。手術の方法には、骨の中に材料を注入して安定させる方法や、金属で背骨を支える固定術などがあり、骨折の状態や全身状態を考慮して選択されます。
圧迫骨折の治療は、単に痛みを取るだけでなく、背骨の形がこれ以上崩れないようにすること、将来的な生活機能を保つことを目標に進められます。そのため、治療内容は骨折の状態、年齢、骨粗しょう症の有無、生活背景などを総合的に見ながら決められていきます。
受診を考える目安
背中や腰の痛みが数日で改善しない場合、体を起こせないほど痛い場合、明らかな外傷後に強い痛みが出た場合には整形外科での評価が有用です。画像検査によって骨折の有無を確認することができます。
すべての腰痛が圧迫骨折というわけではありませんが、「いつもと違う痛み」を感じたときには骨の問題も考えることが大切です。
圧迫骨折でやってはいけないこと
圧迫骨折では、骨が安定するまでの期間に無理をすると、椎体のつぶれが進行したり、変形が強くなったりすることがあります。そのため、日常生活の中でもいくつか注意が必要な点があります。
まず1つ目は、痛みが強い時期に無理に体を前に曲げる動作です。
前かがみの姿勢は椎体の前方に強い圧縮力がかかるため、骨折部への負担が大きくなります。
2つ目は、重い物を持ち上げることです。
特に床から物を持ち上げる動作は背骨に強い負荷がかかり、変形の進行につながる可能性があります。
3つ目は、自己判断でコルセットを外してしまうことです。
痛みが軽くなったとしても、骨の安定が十分でない時期に装具を外すと、背骨への支えが弱まり負担が増えることがあります。
4つ目は、長時間同じ姿勢を続けることです。座りっぱなしや立ちっぱなしの状態が続くと、特定の椎体に負荷が集中しやすくなります。
5つ目として、強い痛みがあるのに我慢して活動量を増やすことも避けたい点です。
痛いのを紛らすために運動したり、腰痛は運動不足のせいだと勝手に考えてランニングをしたりするのは、腰痛の原因がはっきりするまではやめておきましょう。痛みは体からの重要なサインであり、無理を重ねることで回復が遅れることがあります。
圧迫骨折では、完全な安静だけが正解というわけではありませんが、「負担をかけすぎないこと」と「医師の指示に沿った動き方をすること」が回復の基本になります。体全体を支える重要な役割を果たし、さらにその中を神経が通っているという重要な背骨が変形している状態なので、変形した骨がずれやすい状態などで無理な動きをすると、神経を傷つけたりして後遺症が残ることもありえます。
圧迫骨折と向き合うために
圧迫骨折は高齢化に伴い増えている骨折の一つですが、適切な治療と骨粗しょう症対策により再発を防ぐことが可能です。背中や腰の痛みは身体からのサインであり、その原因を確認することは将来の生活機能の維持にもつながります。
痛みの背景を知ることは不安を減らす第一歩です。背中や腰の痛みは、圧迫骨折以外でも生じます。気になる症状が続くときには、まず整形外科を受診して相談してみてください。
志木新成メディカルクリニックは、整形外科の診療をしております。腰や背中の痛み、骨や筋肉、姿勢のことなどで心配なことがございましたら、当院の医師にご相談ください。
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